◆全国の公営交通事業者の運行管理者を集めて研修を実施2

 大阪市交通局の発表の後、クレフィール湖東専任講師である高畑氏が、「運輸安全マネジメントに基づく現場管理力の強化」と題して、講演を行いました。

運輸安全マネジメントに基づく現場管理力の強化
──高畑勇講師(クレフィール湖東専任講師)

高畑勇クレフィール湖東専任講師

■事故と苦情はバス事業の欠陥商品という意識を持つ

 

 この講演で高畑氏が強調していたのは、『公営交通は、これから安全・安心・快適な輸送サービスで、地域の皆様の信頼を勝ち取らなければならない、そのために「事故と苦情は欠陥商品」という認識を持って運転者教育に取り組む必要がある』ということです。

 

 公営交通は、自治体のコスト削減の観点から事業そのものを廃止したり民間委託などの改革が進行しており、公営交通として生き残るためには市民の皆様に選ばれるようなバスにしなければならないということなのです。
 そのために必要なことは、まず運転者の意識改革を図るということです。
 『かつてはバスを利用する人も多く、公営交通といえば「乗せてあげる」といった態度でもやっていけた時代もありましたが、その後は「乗っていただく」という時代を迎えました。そして、これからはお客様も益々少なくなり、バスの中で選ばれる時代であるという意識が必要となります』

 

 としたうえで、意識を変えるには運転者の考え方を変えなければならないし、次のような視点が重要だと指摘しました。
 『運転者に、自分は誰に仕事をもらい、生活が守られているかを考えさせる必要があります。仕事を与えてくれているのは、市民であるお客様であり、そのために自分の生活が守られているという視点を持つことが大切です。そういう視点を持てば、お客様への感謝の気持ちが生まれ、接客も自然に笑顔になり、車内マイクも有効に活用するようになります』
 自分の生活を守るということは、事故を起こさない、お客様からの苦情を出さないという意識にもつながってきますので、この視点は運転者指導をするうえで非常に重要な視点ではないかということです。
 つまり、「プロとして自分を守るため、あなたの生活を守るために事故、苦情をゼロにしましょう」という視点で、運転者指導をすることが大切だということです。

 

 『運転者に、安全運転をするのは誰のため、事故に遭って困るのは誰なのかを考えてもらえば、答えは簡単に出てきます。管理者として、「事故や苦情の多い人をお客様を運ぶ輸送の現場には出せません」と説得するのです。それでも事故や苦情がなくならないのであれば、プロの運転者として失格ということで、仕事を続けていくことはできません。努力しなければ生き残れないということを言っていくわけです。

 公営交通を辞めることになれば、再就職はおぼつきません。民間のバス会社で雇用されるのは難しいからです。仕事を失えば、自分と家族の幸せを守ることもできないということを理解させます』

■運転者を納得させなければ行動を変えられない

 

 管理者が運転者を指導する場合に、もう一つ大事な視点として強調されたのが、「いかに運転者を納得させる指導ができるか」という点です。

 

 『プロの運転者は納得しないと行動しませんから、ドライブレコーダーの分析データを使ったり、実際に現場に出向いて添乗をして運転者の運転ぶりなどを見て、どのような運転をしているのか、どのような接客をしているのかなど把握する必要があります。そういう客観的なデータや実際の見聞資料をもとに指導していくことが大事です。
 また、事故を起こした時なども、一方的にしゃべるのではなく、運転者の意見をよく聞きながら原因を追及するなど、親身になった対応が必要です。いわば、管理者がカウンセラー役になるような指導をしなければ、運転者の心を開くことはできません』

 

 そして、「指導の継続性」にも触れられました。
 『営業所長などの管理者は、人事異動で代わりますから、代わるたびに1から始めるというのは、いかにも効率が悪すぎます。次の人が来ても同じような指導ができるように、運転者指導のデータは、データベース化しておくことも重要です』

車内事故の危険 チェック

■高齢者との事故を防止することが大切


 最後に、最近高齢者が事故に遭うケースが増えていることから、高齢者との事故防止の重要性を強調されました。


 『高齢者の死者数は、今や50%を超えており、バス運転者としても高齢者に対して危険感受性を高めていかなければなりません。高齢者の行動特性を理解し、機会あるごとにヒヤリ・ハット事例を共有することが重要です。また、昼間にバスに乗車されるお客様は高齢者が中心であり、高齢者に安心して乗っていただけるバスでなければなりません。そのためには、高齢者の車内事故防止にも注意を払わなければなりません』

 

 として、高齢者との事故防止資料として配布した、高齢者の行動特性を知るうえで参考になる冊子「高齢者の歩行者、自転車、ドライバーを守る」(シグナル社刊)と、自分の運転のなかで車内事故を起こす危険な運転行動をしていないかをチェックする冊子「車内事故の危険度をチェックしよう」(シンク出版刊)の活用方法などを説明しました。

グループ討議 バス事業者

◆グループ討議

 

  研修会の後半では、参加者が4班に分かれて、次の4つのテーマでグループ討議を行い、3日目の最終日に報告を行いました。

 

「運輸安全マネジメント(エコ、安全運転、省エネ運転)の確立と取組み」

 

「自ら考え行動する自主自立型運転者の育成(ドライブレコーダーの活用、小集団活動、個人管理指導と個人データの一元化)」

 

「高齢者社会への対応(対高齢者に対する安全とサービス、シニア運転者の管理指導)」

 

「車内事故防止対策(目配り・気配り、安全と安心、対高齢者・車椅子等体の不自由な方への対応)」

【取材・文責 シンク出版編集部】

【社団法人 公営交通事業協会について】
 バス・地下鉄など、地方公共団体の経営する交通事業の経営に関する制度の調査、研究事業を行うほか、運行管理者研修、エコドライブ研修さまざまな研修事業を実施しています。詳しくは、同協会のホームページを参照してください。

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4月30日(火)

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