放置駐車違反で納付命令に従わないとどうなりますか? - 人と車の安全な移動をデザインするシンク出版株式会社

放置駐車違反で納付命令に従わないとどうなりますか?

駐車違反をした車両の所有者に科される放置違反金の未収金が55億円に達するというニュースを耳にしました。真面目に納付している人が浮かばれない徴収制度も疑問ですが、放置違反金を支払わないとどのようなデメリットがあるのでしょうか?

■放置違反金とは

(1)放置違反金制度

 駐停車違反に対するペナルティーは、本来であれば、その車両を運転していた者に対して与えられるべきものです。

 

 しかし、放置車両が存在していたとしても、誰が乗っていたのかわからない場合、運転者が自ら申告しなければ、違反点数の加算や反則金の支払いを求めるなどの責任追及を十分に行えないことがあります。

 

 その不都合を修正するため、平成16年に改正され、同18年から施行された道路交通法によって、運転者が分からない場合、車両の使用者(車検証等の車両登録上の使用者)に、放置違反金という行政制裁金の支払いをさせることになりました。

 

 もともと車両の使用者には、車両の使用にあたっての運行管理義務等があるため(同法74条、74条の2など)、運転者の責任を追及できない場合に、使用者の責任を追及できるとされたものです。

 

 同制度によって、従来は自主的に申告されない限り運転者が特定できず、何らの処分もされなかった事案について、行政的に処分が可能となったという面があります。

 

 ただ、運転者として出頭すると違反点数が加算されて、さらに反則金の支払いが課されますが、駐車違反をしても所有者として放置違反金を支払えば違反点数には影響がありません。

 

 そのため、駐車違反をした場合、運転者にとっては出頭しない方が有利だということになり、この点は問題があると指摘されています。

(2)制度の概要

 まず、違法駐車と認められる車両で、運転者がこれを離れて直ちに運転する事ができない状態にあるもの(放置車両)について、警察官や駐車監視員等が、その状態を確認し、確認した旨、及び放置違反金の納付を命ぜられることがある旨の標章が取り付けられます(同法51条の4第1項)。

 

 同標章が取り付けられたことは、公安委員会に報告され(同法同条第3項)、公安委員会は当該車両が放置車両だと認めるときは、当該車両の使用者に対して放置違反金の納付命令を出します(同法同条第4項)。

 

 場合によっては車両の使用者に言い分等がある場合もあると考えられますので、同命令をしようとするときには、相当の期間を指定して、弁明書、及び有利な証拠を提出する機会を与えなければならないとされています(同法同条第6項)。

■放置違反金を支払わない場合

(1) 督促

 上記の納付命令を無視して、納期限を経過しても放置違反金を納付しない場合、公安委員会は、督促状によって納付すべき期限を指定して督促するとされています(同法同条第13項)。

 

(2) 徴収

 督促を受けた者が、指定期限を経過しても放置違反金を納付しないときは、公安委員会は、地方税の滞納処分の例により、放置違反金等を徴収することができるとされています(同法同条第14項)。つまり督促を受けても無視していた場合には、預貯金や不動産、有価証券や動産などの財産を差し押さえられて強制的に回収されることになります。

 

(3) 自動車検査証(車検証)の返付拒否

 また、放置違反金の納付を命ぜられたにもかかわらず、これを納付せず、公安委員会から督促を受けるに至った自動車の使用者は、当該放置違反金等を納付したこと又はこれを徴収されたことを証する書面を提示しなければならないとされています(同法51条の7第1項)。

 

 そして、この書面の提示がないときは自動車検査証の返付をしないとされており(同法同条第2項)、「車検拒否制度」と言われています。

 

(4) 使用制限命令

 また、公安委員会が車両の使用者に対して納付命令をした場合に、その使用者が違反の標章が取り付けられた日の前6ヶ月以内に、同じ車両が原因となった納付命令を受けたことがあり、かつ当該使用者が当該車両を使用することについて著しく交通の危険を生じさせ又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めるときは、公安委員会が政令で定める基準に従って、3ヶ月を超えない範囲で期間を定めて、当該使用者に当該車両を運転し、又は運転させてはならない旨を命じることができるとされています(同法75条の2第2項)。

 

 要するに、何度も納付命令を受けている場合に、当該車両の使用を制限するものです。同命令は当該自動車の使用自体を禁止するものなので、使用者だけではなく、誰も運転してはならないということになります。

 

 現状では、使用制限の前歴がなければ6ヶ月以内に4回行わないと使用制限の対象にはなりませんが、前歴が2回以上ある場合には、2回目で使用制限の対象となります。

■まとめ

 盗まれた自動車などでは基本的に同制度の適用は考えにくいですが、通常の使用にあたっては、駐車違反(放置車両)についての使用者に具体的な責任があります。

 

 特に会社として従業員に自動車を使用させる場合に、同制度の対象となった場合、具体的な取引や業務に支障が生じる場合もありえますので、日頃から従業員に対し駐車違反をしないように指導し、コインパーキング等の利用を指示しておくべきです。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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