もし積荷を落下させたら、どのような責任を問われますか?

清水伸賢 積荷落下の責任

弊社は貨物運送事業者ですが、高速道路を走行していると「落下物は落とし主の責任」と電光掲示板に表記されているのをよく見ます。万が一、積荷を落下させて後続車や対向車に積荷が衝突して事故が発生した場合、具体的にどのような責任に問われますか?

■高速道路上の落下物の責任

 高速道路上で落下物を生じさせた場合に生じる責任は、大きく刑事責任、民事責任があり(2015年7月掲載)、またそれによる事故が生じた場合には、行政上の責任も生じることがあります。

■刑事上の責任

(1)落下・飛散自体に対する罰則

 まず道路交通法違反75条の10は、「自動車の運転手は高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ・・・貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において・・・積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない」と規定しています。

清水伸賢弁護士,WILL法律事務所

 同義務違反の場合には罰則が定められており、故意に措置を講じずに、当該自動車に積載している物を当該高速自動車国道等に転落させ、若しくは飛散させた者に対しては3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金刑が定められており(同法119条1項19号)。また過失であった場合でも、積載物を転落させ、若しくは飛散させた者には10万円以下の罰金とされています(同法同条3項)。

 

 積載物等が落下した場合には、基本的には転落や飛散を防止するための措置が講じられているとはいえないと考えられるため、落下物が生じた時点で責任があると考えるべきです。

(2)死傷結果に対する罰則

落下物の刑事責任

 そしてその落下物が原因で、後続車が事故を起こし、人が死亡したり、傷害を負ったりした場合には、自動車運転過失致死傷罪の成立が考えられます。

 

 この点、不可抗力による場合にまで人を罪に問うのは酷であり、そのような場合は原則として責任は認められず、自動車運転過失致死傷罪についても、同罪が成立するためには、運転者に過失があることが必要です。

 

 そのため不可抗力で落下したり飛散したりした場合には、同罪が成立しない場合もありえます。

 

 そもそも、自動車の運転者の義務として、「乗降口のドアを閉じ、貨物の積載を確実に行う等当該車両等に乗車している者の転落又は積載している物の転落若しくは飛散を防ぐため必要な措置を講ずること。」(同法71条4号)「車両等に積載している物が道路に転落し、又は飛散したときは、速やかに転落し、又は飛散した物を除去する等道路における危険を防止するため必要な措置を講ずること。」(同法同条4号の2)が定められています。

 

 同義務に違反していれば過失は認められますし、その他通常とは異なる運転、あるいは過積載、整備不良など、道路交通法違反に当たるような行為によって落下物が生じ、死傷結果が生じた場合などにも運転者に過失が認められるといえます。

 

 自動車運転過失致死傷罪の罰則は、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金刑です(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)。

 

 ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるともされています(同条但書)。

(3)救護義務違反等

 なお、落下物によって事故が生じ、死傷者が出ている場合、運転者には救護義務や危険防止義務、通報義務等の義務が生じますので、これに違反した場合にも罰則があります(道路交通法72条)。

 

 通常の違反に対しての罰則は、5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金刑ですが(同法117条第1項)、人の死傷が当該運転者の運転に起因する場合には、その違反に対する罰則は10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金刑です(同法同条第2項)。

 

 落下物の場合でも、「運転に起因する」といえるような場合であれば、後者が適用されることが考えられ、いずれにしても事故が生じた際にはきちんと運転者の義務を果たすことが必要です。

 

 ちなみに、落下物で事故が生じただけでは雇用主や法人に対する両罰規定はありませんが、過積載その他不適切な積載の指示等があれば、法人等に対しても処罰規定が適用されることは考えられます(同法123条)。

■民事上の責任

落下物の民事上の責任,使用者責任,運行供用者責任

 運転の際に積載物を落下させて他人に損害が生じた場合、運転者は不法行為責任を負い、損害賠償義務が生じます。

 

 ただし、高速道路上の後続車との事故の場合、後続車が車間距離をとって前方を注視していても落下物への衝突が回避できないような状況であったという場合は多くないと思われるため、積載物を落下させた者の責任は認められるものの、後続車自身にも前方不注視等の落ち度が認められることが多いといえます。

 

 そのため、落下物により生じた事故の場合には、過失相殺の適用がされることが多いといえ、落下させた者と衝突した後続車の過失割合は、概ね6:4程度が基準とされています。

 

 また、通常の交通事故による民事上の責任同様、運転者が会社等の従業員であり、業務において運転していたような場合には、会社等には使用者責任や、運行供用者責任が生じることになります。

 

 さらに、積載物の落下や飛散による事故の場合には、運送事業者だけではなく、荷主が具体的に不適切な積載方法等を指示していたような場合には、当該荷主に対しても使用者責任や荷主自身の不法行為責任が追及されることが考えられます。

■行政上の責任

 落下物が生じた原因として過積載や整備不良等が認められる場合には、その運送事業者等に対して行政上の処分がされることがあります。

 

 貨物自動車運送事業法、道路運送車両法、道路交通法などに基づく監督処分が考えられ、その態様や程度によって、車両停止処分、事業停止処分、許可取消などの処分や、整備命令等の命令が出されることが考えられます。

■まとめ

 高速道路上で落下物が生じた場合、運転者自分では処理できないことも多く、自分で処理等すれば却って事故を招いてしまうこともあります。

 

 まずは落下物が生じないように、運転前に十分確認し、運行中にも高速道路では2時間に1回、一般道路では4時間に1回チェックを行うようにしましょう。

落下物の責任,落下物防止の対応方法

執筆 清水伸賢弁護士

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