運転中の「ながらスマホ」厳罰化──道交法改正

■事故を起こせば懲役1年以下/反則金は約3倍となる

 

 政府は道路交通法の一部改正案を第198回国会に提出、5月28日の衆院本会議で可決され、改正道路交通号が6月5日に公布されました。 

 

 今回の道路交通法改正の骨子は次の2点です。 

 

  1. 携帯電話使用等対策を図るための規定の整備 → ながらスマホ等への罰則強化
  2. 自動運転技術の実用化に対応した規定の整備  → 自動運転の定義等を明確化

 1の携帯電話使用への罰則強化では、スマートフォンや携帯電話を手に持って通話するなどの違反行為が重大事故に結びついていることから対策を厳しくするもので、2019年12月1日に施行されます。

 

 運転中にスマートフォンなどを使用していて交通事故などの危険に結びついた場合、改正前の罰則は「3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金」ですが、これを「1年以下の懲役、または30万円以下の罰金」に引き上げます。

 なお、反則金の適用はなくなり、すべて刑事罰が適用されることになります。違反点数も6点となりますので、即免許の停止処分を受けます。

 

 また、運転者がスマートフォンなどを運転中に使用した違反では(保持)、改正前の罰則は「5万円以下の罰金」ですが、これを「6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金」と懲役刑を新設して、反則金も以下のように引き上げられます。反則金などの支払いを拒む運転者には実刑適用もあり得ます。

携帯電話使用等の死亡事故は2.1倍
警察庁のホームページ資料より

 さらに、携帯電話等を使用して交通の危険を生じさせ、交通事故で人を死亡させたり傷つけた場合は、免許の効力仮停止の対象とされます。

 

 警察庁によると、2018年中にスマートフォンや携帯電話の操作などが原因で発生した人身事故は2,790件で、このうち45件は死亡事故でした。2013年の2,038件と比べて1.4倍の水準となっています。また、死亡事故率を比較すると携帯電話使用等の場合には、使用なしと比較して約2.1倍と高くなっています。

 なお、携帯使用等の年間取締り件数は約84万件で道交法違反全体の14%を占めています。 

 

■その他の改正要点

 この他の道交法改正点は以下のとおりです。

・複数の幼児が乗せられる電動ベビーカーや手押し運搬車の規定を見直して「自動車」から除外します。これらの車両は、改正法施行後は車道ではなく歩道を通行できるようになります。

・離婚等により姓を変更した人などが運転免許証の記載事項の変更届出をしたとき等の一定の場合に変更後の運転免許証の再交付申請が可能となります。

・免許の取消しを受けた人が運転経歴証明書を申請する場合、現住所地での取得が可能になります。

 

 携帯電話使用の罰則強化などは、道路交通法施行令を改正して2019年12月1日を目標として施行され、反則金は保持だけでも大型車2万5千円、普通車1万8千円など大幅に強化され、違反点数は3点となる見込みです(詳しくはこちらを参照)。 

 

(※編集部注)法案は5月28日に衆院本会議で可決され成立。6月5日に公布されました。

 なお自動運行装置を使用した運転の改正部分に関しては付帯決議があります。

 

■携帯電話使用等に関する罰則の強化──2019年12月1日施行

 (道路交通法第71条第5号の5の規定に違反した場合の罰則)

改正ポイント

携帯電話使用等により

交通の危険を生じた場合

携帯電話の使用等

(保持)

改正前

3月以下の懲役または

5万円以下の罰金

5万円以下の罰金keinisyose

改正後

1年以下の懲役または30万円以下の罰金
6月以下の懲役または 10万円以下の罰金

■携帯電話使用等に関する違反点数・反則金の引上げ──2019年12月1日施行

改正ポイント

携帯電話使用等により交通の危険を生じた場合

 

 

携帯電話の使用等

(保持) 

 

 

 

改正前

違反点数 2点

反則金 大型 1万2千円

    普通 9千円

    二輪 7千円

   小特等 6千円

違反点数 1点

反則金 大型 7千円

    普通 6千円

    二輪 6千円

   小特等 5千円

改正後

違反点数 6点

(即免許停止)

 

 非反則行為となり、全て

 罰則を適用

違反点数 3点

反則金 大型 25千円

    普通 1万8千円

    二輪 1万5千円

   小特等 1万2千円


■自動運転レベル3においては、スマホ操作などが一部可能に

■「自動運行装置の使用」を法律上の運転と明記

 2については、2020年にも一部実用化が計画されている自動運転技術の定義等を明確化し、自動運転中、装置の作動状態を確認するために必要な情報を記録する装置の装備や記録の保存などを義務づけるため、道路運送車両法と連動した法改正に臨むものです。

 

 ドライバーのように認知、予測、判断、操作に関する能力の全部を代替できる自動運転システムを、一定の条件付きで「自動運行装置」として新たに規定するとともに、装置を使用して自動車を用いる行為は法律上の運転に含まれることを明記しています。

 

■直ちに「手動運転に復帰できる」ことが前提

 ここでいう「一定の条件」とは、自動運行システムを使用できる「場所や天候、走行速度、時間等の制限」などの走行環境条件を国土交通大臣が車種ごとに規定することを指しています(道路運送車両法の改正による)。

 さらに、自動運転レベル3(緊急時以外は自動運転をする)が実行されている状態で、一定の条件を満たさなくなった場合、直ちにドライバーが手動運転に復帰して適切に対処することができる態勢にある場合に限って、携帯電話の通話やスマートフォン操作などが可能になるといった規定が盛り込まれています。

 つまり、自動運転レベル3では、ドライバーが車内で眠り込んだり、飲酒などをして手動運転にすぐにきちんと復帰できない状態では、従来どおり道路交通法違反等に問われることになります。

 

 自動運転関連の改正内容は、自動運転車の安全性を確保するための制度を整備するため、改正道路運送車両法(5月8日に改正案が成立)の施行日と同時に施行となり、2020年度になると見込まれています。

■自動運転に関する改正ポイント──2020年度をめどに施行

「自動運行装置」の定義を道路交通法に明記

 装置の作動が「運転」にあたることを規定

(当面、レベル3について)スマートフォン・携帯電話によるメール、パソコン作業、読書、食事などを許容するが「直ちに復帰して確実に車の操作をできる状態」という条件付き

■危険・迷惑な運転をするドライバーを指導しよう

 最近、他の車をあおったり、運転中にスマートフォンを操作して重大事故を誘発するなど、「ドライバー失格」と言える行為が目立つようになり、取締りや罰則が厳しくなっています。

 

 この冊子では、代表的な危険・迷惑運転を取り上げ、その罰則の重さと、運転上の注意ポイントを解説しています(携帯電話等使用時の罰則強化にも言及しています)。 

 

 ドライバー向けのセルフチェック欄も設けていますので、自分が無意識のうちに危険・迷惑運転をしていないかチェックすることができます。今、事業所にとって運転者教育に最適の小冊子です。

 

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