あおり運転の被害者にならないために

■ある種の運転行動が「あおり行為」を誘発する危険も!

あおり運転の誘発に注意

 先日、このコーナーでもお知らせしたように2020年6月30日から改正道路交通法が施行され、いわゆる「あおり運転」行為が妨害運転として厳罰に処せられることになりました。

 また、7月2日には、改正自動車運転死傷行為処罰法も施行され、妨害運転をして高速道路などで他車を停止させて死傷事故を起こした場合は、危険運転致死傷罪が適用されます。

 

 警察庁は厳罰化によってあおり運転行為の抑止をねらっています。

 ただし、あおり運転が発生する背後には被害者となった運転者の行動に原因の一部があるとも言われています。

 

 事業者の運転者があおり運転の加害者にならないだけでなく、被害者として巻き込まることを防ぐためにも、どのようなきっかけであおり運転が発生しているのか指導し、慎重な運転をするように呼びかけましょう。

■あおり運転をする割合が高いのは「若い男性運転者」

 警察庁の分析によると、あおり運転は年齢の若い男性運転者が、被害者のある種の運転行動をきっかけに、攻撃的運転を起こすという特徴があります。

 分析の対象となったのは、2018年~2019年に全国の警察が悪質なあおり運転として摘発した133事件です(危険運転致死傷罪で立件した59事件と刑法を適用した74事件)。

 

 加害者の年齢層は、40代がもっとも多く27%で、次いで20代22%、30代20%、50代が17%と続いていて、運転者全般におよんでいます。

 

 しかし、免許保有者10万人当たりで見ると10代の加害者が0・57人と最多で、20代の2倍、60代の7倍などほかの世代と比べて非常に目立っています(2018年末の免許人口による)。

 さらに、加害者の96%は男性で78%は同乗者がいませんでした。

 

 なお、これとは別に警察庁交通局交通指導課の矢武陽子氏による詳細な研究(※)によると、危険運転致死傷罪で検挙されたあおり運転事件38件(2016年~2017年)を分析したところ、加害者は全員が男性でした。被害者は31件(82%)が男性、7件(18%)が女性で、加害・被害とも男性中心の事件となっていました。

 この研究でも、年齢層別運転者数からみて若い運転者ほどあおり運転を行いやすいという傾向が明らかになっています。若い男性に顕著に目立つという点は英国などでの先行研究でも同様の傾向が指摘されています。

「日本におけるあおり運転の事例調査」-先行研究のレビュー結果を踏まえて-/警察庁交通局 交通指

  導課 矢武陽子(国際交通安全学会誌 IATSS Review 2019年43巻3号

■相手の行動にカッとして…

あおり運転をしたきっかけ

 先述の警察庁の調査で妨害目的の運転が始まる動機を調べたところ、相手の運転行動がきっかけとなったと主張している事例が多数を占めています(右図参照)。

 第1位は「進行の邪魔をされた(進行を譲らない、前車が急ブレーキをかけた)」35%、次いで「割り込まれた・追い抜かされた」22%、「車間距離を詰められた」8%、「クラクションを鳴らされた」5%などとなっています。

 

 カッとしやすいタイプの運転者の一方的な思込みがあるかもしれませんが、被害を受けた側にもあおり行為に似た行動が見られ、加害者が不快感を覚えたことがきっかけになっている可能性があります。 

■ドライブレコーダーは重要な証拠に

バス停の駐停車禁止要件緩和

 なお、あおり運転の立証には映像が力を発揮しています。

 

 133件のうちドライブレコーダーの映像が根拠となったケースが64%あり、このほか道路の防犯カメラやスマートフォンの映像が証拠になった事件も17%ありました。

 自衛のため自社の車にドライブレコーダーを設置するのは有効です。

 

 ただし、ドライブレコーダーには車内の音声や自車のクラクションの音なども録音されますので、自社の運転者が「あの車、腹が立つ!」「許さないぞ」といったことを言っている場合、あおり運転の発生について自社側にも一定の責任があると判断される可能性があります。

 運転中は会話等にも十分に注意するように指導しておきましょう。

■他車に不快感を与えていないか常に意識しよう

19歳で大型免許・二種免許取得可能

 進行を邪魔しようと意図して行った運転行為ではなくても、車同士は顔の見えないコミュニケーションですので、相手に誤解される恐れがあり、気をつける必要があります。

 

 たとえば、ブレーキを踏むタイミングが遅くて前車との車間距離が急に詰まってしまったり、後方の安全確認が甘いまま進路変更をして後続車が急減速せざるを得なかったりハンドル操作で避けるということがあります。

 このとき、相手は攻撃的な運転をされたと感じるかも知れません。

 

 これらの不信感・不快感により、あおり運転をされたと誤解されたり、相手の妨害運転に発展する危険があります。

 

 そこで後続車がいる場合は、後方の安全確認を意識して行う、みだりに進路変更をしない、追越車線にとどまらず進路を譲る、相手にブレーキを踏ませない、距離を十分とる、など安全運転の基本を守ることで他車の運転者を刺激しないように意識して走行することが重要です。

 

 なお、不幸にしてあおり運転被害にあってしまった場合、警察庁では対応策として

  • 相手を追いかけない
  • できる限り人目がある安全な場所に停車する(サービスエリアやパーキングエリア等)
  • 車の窓を開けない
  • 車外に出ず、ロックをして110番通報する
  • ドライブレコーダーやスマートフォンで相手の行動を記録する

などをアドバイスしています。(※詳しくは、 → 政府広報のWEBサイトを参照

【参考】

 ・改正道交法「あおり運転」を厳罰化─2020年6月30日施行(最近の法令改正)

 ・改正道路交通法が施行されます─2020年4月1日施行(最近の法令改正)

 ・あおり運転の取締りが強化されています危機管理意識を高めよう

 ・あおり運転などの交通トラブルに対する対処は?(安全管理法律相談)

 ・「ながら運転」の厳罰化を周知していますか危機管理意識を高めよう

 ・危険性帯有者の処分について指導していますか危機管理意識を高めよう

 ・あおり運転で「殺人罪」などの判決(交通事故の判例ファイル)

 ・「あおり運転の車に賠償請求権なし」とした裁判例(交通事故の判例ファイル)

■教育用DVD「あおり運転~加害者にも被害者にもならないために」

 「あおり運転」が社会問題になり、多くのドライバーがこの「あおり運転」の被害を経験しています。

 

 「あおり運転」の加害者にも被害者にもならないために、私たちはどうすればよいのでしょうか?

 

 本DVDは「あおり運転」の定義から、感情コントロールの方法、具体的な運転方法、あおり運転の被害にあった時の対処まで解説した作品となっていますので事業所の安全運転教育に最適な内容となっています。

 

【詳しくはこちら】

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